TOPICS
トピックス記事
タイで債務超過になったらどうなる?
タイで債務超過になったらどうなる?
会社の財務状態『 債務超過』とは?
ニュースサイトや新聞等で「○○社が債務超過」という言葉を見聞きしたことはありませんか? これは単に決算が赤字だったというよりも深刻で、会社が持つ資産よりも負債が多い状態を指します。
例えると、A氏の資産評価は現預金の動産と不動産を合わせて3,000万があり、A氏の借金は5,000万円あったとします。この場合、A氏の財務状態は、総資産より借金の負債の方が上回り、すぐに返済するのは難しい状態です。
実は会社でも同じような状況で、会社の資産よりも負債が大きいと、会社経営の体力がマイナスになった状態になります。これを会計用語で『債務超過』と呼び、債務超過は年次決算の赤字以上に、銀行や取引先の信用にも影響する重要な指標です。
貸借対照表で債務超過をチェックする
会社の財務状況を知るために役立つのが「貸借対照表,Balance Sheet,B/S」です。貸借対照表には、会社が持っている資産と、返済しなければならない負債、そして、その差である純資産で構成され、「資産=負債+純資産」の式で表します。
正常な財政状態と債務超過の貸借対照表の違いを図で表します。

正常な財政状態と比べて、債務超過の図では、純資産(資本金10+未処理損失▲30=▲20)が減少していることを確認できます。
なお、タイの民商法典において、会社の損失が資本額の半分に達 した時は、取締役はその損失を株主に知らせるために 臨時株主総会を招集しなければならない(第1172条)と定められています。そして、年次決算の会計監査を受けた際、会計監査人から債務超過に関する臨時株主総会議事録を求められることがあります。
債務超過の影響
タイで債務超過の状態になると、会社は様々な制約を受けるようになります。
具体的には、以下のような問題が生じてきます。
・監査上の問題
・銀行からの融資が受けにくくなる
・取引先が前払いを求めるようになる(返済能力に不安があると判断される)
・債務超過のままでは会社の清算ができない
・場合によっては駐在員のビザの更新手続き等にも影響
長期間債務超過の状態が続くと、設備投資が滞り、新規事業の展開も難しくなってきます。その結果、会社の成長力にも影響します。つまり、債務超過は会社経営の「体力」が弱まっている兆候であり、早期の対応が必要です。
債務超過の主な解消方法
会社が債務超過の状態にある場合、まず重要なことは、経営の体力を回復させることです。この債務超過の主な解消方法としては以下の様なものが挙げられます。
・債務超過の解消となるまで利益を生み出す(コスト削減・売上改善)
・増資により純資産を増やす
・債務免除により負債を減らす
・売却益が見込まれる資産を売却する
上記の他に、デッド・エクイティ・コンバージョンまたはデット・エクイティ・スワップという方法もあります。これは、主に親会社等から借入れが有る場合にその借入金を資本金に変更する(親会社等は株式を得る)というものです。ただし、タイの民商法典第1119条「株式の払込において株主は会社の債務との相殺をしてはならない」に基づき、非公開会社においては、デット・エクイティ・スワップ(DES/債務の株式化)の採用はできません。
まとめ
債務超過は「会社の体力が弱っている状態」を表しています。早急に対応策を検討し改善を進めることが、会社の存続・維持に繋がります。
【免責事項】
本稿は、一般的な事項についての情報提供を目的として作成されたものであり、実際の遂行にあたっては、多くの場合関連法規の検討、並びに専門家との協同が必要になります。このため、執筆者並びにその所属先は、本稿の利用に起因する如何なる直接的・間接的な損害に対しても一切の責任を負いかねます。また、本稿記載の情報は作成時点における調査に基づいたものであり、随時更新される可能性がありますことをご了承ください。